■創刊前号■J*美 うつろわぬ日本の美を刊行するにあたって

◇うつろわぬ日本の美を求めて。

◇三十歳までというもの、それまで私の自由精神の支柱になっていたものは、やはり西洋の文化でした。
それは米国の映画であり、JAZZであり、キュビズムの絵画であり、シェークスピアでした。

◇ただ、三十半ばあたりから、日本の文化=うつろわぬ日本の美=というものが、私の裡を支配しはじめ、今では映画が歌舞伎に、JAZZドラムが小鼓に、キュビズムが琳派に、シェークスピアが世阿弥へと変貌を遂げたのでした。

◇私は京都に生まれ、現在は仕事の都合で東京で暮らしています。
若い頃、あれほど厭だった京都の生活が=何かにつけて制約の多すぎる古都の人々の暮らしぶりが=今では懐かしく思い出され、彼らのひとつ一つの行いが、古の昔からつづく理にかなったものだということを、皮肉なことに京都を離れてから知ったという次第なのです。
それは感傷的な、ただのホームシックというものではなく、日本の原点=日本人であれば、その琴線に深く響くものだと改めて感じ入ったのでありました。

◇そんな折り、このメールマガジンという存在を知り、何の制約もなく、自分の心情を書かせてもらえるということで、日本の美を主題としたエッセイを書くことを漠然とした状態で決めたのでした。

◇私は、美術評論家でも、小説家でも、学者でも、古美術商でも、鑑定家でもなく、市井に生きるまったく普通の人間であります。
ただ、そんな高名な方々がこれまであまり取り上げてこられなかった『日本の美』にスポットをあてて、自分なりに感じたことを文章にしたいという思いも、このメールマガジンを刊行する動機となりました。

◇ですから美術史観や、様式論、思想史など知る術もなく、まったくの我流の私的な美学エッセイであり、時折とんでも無い発言をするやも知れませんが、その辺はご容赦くださいますよう、お願い申しあげます。

◇もちろん、高名な方たちも題材にされた国宝や重要文化財をも取り上げ、自分の言葉で、平易な文章でみなさまにお届けしたいと考えております。
それは時には、仏教美術であったり、浮世絵であったり、お能であったり、和歌であったりという風に、まさに美のリレーともいえるものにしたいと考えています。
末永い御通読を切にお願い申しあげます。

      

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